建設中から話題沸騰だった直営パン工房がついに6月にオープン!
社長の那波さんとパン職人の髙山さん。 おふたりに、ここに至るまでの物語と大切にしている想いを伺った。
「恩返しがしたいんです」と那波さんは話を始めた。およそ 15年前、『ひまわり市場』の経営危機を顧問弁護士の平田達先生が物心両面で支え、救ってくれたことへの「恩返し」だ。今、逆の立場になった那波さんは、パン職人髙山洋祐さんに力を注ぐ。
ふたりの出逢いは実は 20年も前のこと。那波さんが当時まだあった『ひまわり市場』長坂店で一社員として働いていた頃、髙山さんは家族で営むペンション内の『クレ
ッシェンド』のパンを店に卸し始めた。「すごく美味しくて、パンの売れ行きがどんどん上がっていって……」。そんな矢先、兄とパン屋を営むために髙山さんは上京、八ヶ岳を留守にする。「あの時、『クレッシェンド』のパン、美味しかったのにどこ行っちゃったの? とたくさんのお客さんに言われたんだよな」と那波さんは振り返る。
それから 10年ほど経ち、髙山さんは都会生活にひと区切りつけ、八ヶ岳に帰って来た。その報告に那波さんは、「うちにまたパンを出してよ」と、ひとまず馴染みのパン工房を紹介。そこに所属し、ひまわり市場にパンを卸す日々が始まった。こうして、幻となっていた『クレッシェンド』のパン・ド・ミが再び棚にお目見えしたのだった。その頃の時間が有意義だったと髙山さんは言う。「国内外の様々な種類の小麦粉を使い、試行錯誤を重ねられる機会に恵まれ、探究心に火がつきました。やっぱり、国産小麦は美味しい。主流の北米産より値は張るけれど、その価値は十分あることが分かりました」。そして、機が熟し、那波さんは「髙山洋祐をいかすには、うちで工房を建てるしかない!」と一念発起、直営のパン屋をオープンすることを決断した。
「『& ひまわり』ではすべて国産小麦でいきます。地元白州産も美味しかったのでそれでもつくります。朝の開店とともに全体の6割くらいが並んでいて、順次、焼き上がっていくパンの香りが、店の内外に漂うような、そんなリズムでやっていきたい」と髙山さんは店のイメージを作り上げていく。
「結局、人との出逢いが大切なんだと思う。平田先生が「いいものを売るんだよ」と、ひまわり市場を残してくれたように、今度は自分のパワーを髙山洋祐にぶつけ『いいものつくりなさいよ』と伝える」と那波さん。「おかげで数千万の借金を背負うことになったけど(笑)」とおどける姿にも、背負った決断への自信が垣間見れる。
話に出た「人をいかす」というフレーズ。命をつなげる「生かす」、人の能力を「活かす」。双方の意を持つ言葉を放つ今の那波さんはまさに、自分を「いかす」ことに情熱を注いでくれた、恩人平田先生の生き様を映しているようだ。その想いを受け止め、髙山さんはパンを焼き、きっと『& ひまわり』も大きな花を咲かせるのだろう。
Column 1 那波さんのもうひとつの想い①
八ヶ岳は『パンの聖地』だから、『&ひまわり』もそこに一役買えるはず。今までのパン屋さんには引き続き、店に商品を置いてもらいます。
それにもうひとつ加わることで、職人さんには腕に磨きをかけあってもらい、お客さんには選択を楽しんでもらう。そうすることで、地域のパン文化はさらに深みを増し、たくさんの人がパンを目当てに訪れてくれると思います。
Column2 那波さんのもうひとつの想い②
「パン屋の常識でもある夜中や明け方から出勤して働くのではなく、朝日が昇ったら出勤して、日中パンを焼く。日が落ちたら、家に帰って家族と過ごす、そういうパン屋をやらないか」と話しました。「今までにないなら、自分たちが見本になろうじゃないか」と。

ひまわり市場社長の那波秀和さん(右)と 歴史的パン工房『&ひまわり』を任せられた パン職人の髙山洋祐さん。