特集「自然共生サイト」
〈国の認定制度〉多様な生命をはぐくむ、人と自然がつくる未来
「ネイチャーポジティブ」を目指して
「自然共生サイト」とは、企業やNPO、個人の取組などによって、生物多様性の保全が図られている活動や取組を国が認定する制度です。2023年度から環境省が実施し、2025年12月時点で全国485か所が認定されています。
背景には、気候変動や海洋汚染、開発拡大などにより、地球上で種の絶滅が急加速している深刻な現状があります。生物多様性の損失を止め、回復軌道に反転させる「ネイチャーポジティブ」という地球規模の目標を実現させることは国際社会が共有する重要課題です。
これらの状況を踏まえ、2022年に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」目標が盛り込まれました。
この目標を達成させるためには、国立公園などの既存の保護区を守るだけでは十分ではありません。多様な主体が関わる区域を広げていくことが鍵となります。そうした区域の一つひとつを可視化し、支えていく制度が「自然共生サイト」です。
「自然共生サイト」は、いわば生命のゆりかご。ネイチャーポジティブの実現へ向けて、民間企業や個人が生物多様性の保全に真摯に取り組むことは、未来の灯を守ることにつながります。
八ヶ岳ウォークエリアの「自然共生サイト」
●ナチュラルガーデンズMOEGI(山梨県北杜市)
自然の韻(うた)が聞こえる庭
清里を代表する観光施設「萌木の村」を包むガーデン。監修はランドスケープデザイナーのポール・スミザー氏。完全無農薬、無化学肥料といった従来の園芸常識を覆す革新的な手法で、在来種を含む植物のべ700種を育てる。自然の理にかなった、命の息吹を感じる美しい庭園。ガーデンイベントも多数開催。
●八ヶ岳倶楽部の森(山梨県北杜市)
人と自然の仲のいい風景
カフェやギャラリーなどが人気の「八ヶ岳倶楽部」敷地内にある森。創業者で俳優の故柳生博さんと仲間が人工林から多様な生命が息づく雑木林へと蘇らせた共生の森。シラカバのこもれびの下、山野草が咲き、鳥が歌声を響かせる癒し空間。森林セラピストによるリトリートツアーもおすすめ。
●カゴメ野菜生活ファーム富士見(長野県富士見町)
体験型、農と食のテーマパーク
野菜と生きる一日を体験する「農と食のテーマパーク」。町内の在来植物の種子採取と育苗による在来植物再生活動や、生きものの力を活かした農業方法の仕掛け「生きものと共生する農場」などに取り組む。「畑の生きものクイズラリー」や野菜の収穫体験など環境教育も積極的に展開している。
●東急リゾートタウン蓼科(長野県茅野市)
深呼吸したくなる、上質な静けさ
東京ドーム140個分の広大な高原リゾート。カラマツ林などの樹林環境を維持しつつ、ホテルやゴルフ場、スキー場などのアクティビティ施設があり、観光客や地元の人々が多く訪れる。樹林や草原性の多様な動植物が生息するほか、「TENOHA 蓼科」をはじめ、間伐材や地域資源を生かしたサービスも多数。
●日本製紙 鳳凰社有林(山梨県韮崎市)
「環境林分」としての地域貢献
日本製紙が全国に約9万ha所有する森林のうち、水源涵養・生態系維持など公益の環境機能を担保する「環境林分」として管理する区域の一つ。日本百名山の鳳凰三山を有し、希少な高山植物も生育。2026年2月、ネイチャーポジティブ推進のための協働協定を、グループ企業のリンテック(株)と韮崎市の3者により締結。
専門家に聞く! 八ヶ岳エリアの自然共生サイトの特色と可能性
八ヶ岳エリアは“エコツアーの適地”
八ヶ岳は南北約25kmにわたる山岳・高原地帯で「八ヶ岳中信高原国定公園」として指定されています。南八ヶ岳は雄大な山岳がそびえ、北八ヶ岳は広大な原生林と美しい湖が広がるなど、多様で豊かな自然環境のもと、固有種のヤツガタケキンポウゲをはじめ多くの貴重な動植物が生息・生育する生物多様性に富んだエリアです。
このエリアの自然共生サイトは自然を保全しながら有効に活用し、また、活用することにより保全を進めるなど、自然と人のなりわいが共生していることが特徴です。また、無農薬・無化学肥料の美しいナチュラルガーデンや高原を代表する癒しのシラカバの林、農地生態系の保全に取り組む野菜のテーマパーク、森林の循環利用を実践するリゾートタウンと、八ヶ岳の里地、里山、畑、森林と環境別にそれぞれ特色あるテーマを持った自然共生サイトとなっており、更に各サイトとも観光の4要素とも言われる「自然」、「気候」、「文化」、「食」が備わった魅力的な観光地となっています。
八ヶ岳エリアは、自然共生サイトを巡り、自然の豊かさや大切さ、自然と共生する産業や文化などを体験しながら学ぶことができるエコツアーの適地と思っています。
村山 力
- 日本MAB(ユネスコ「人間と生物圏」計画)支援委員
- 環境省自然共生サイト・マッチング制度 委員
- 山梨県環境保全審議会委員
- 山梨県希少野生動植物種指定等検討委員
- 山梨県立武田の杜保健休養林所長




