若者の探究心と向き合ったとき、大人はどうあるべきだろうか？
「アンケートの総数は?」「この考察は違うのではないか」「ものごとは光があれば必ず
影がある。影についても考えると、より深い探究になる」と、高校生の発表に対して、大
人たちから容赦なく本質的な指摘が飛ぶ。
　この日、北杜市にある山梨県立北杜高校の視聴覚室には、総勢250名の高校生と大人た
ちが集っていた。北杜市が取り組む「水の山」ブランド推進事業のひとつ、「水の山」ユ
ースアイデアプロジェクト。その総集編とも言うべき「３校合同発表交流会」の場である
。
　北杜市は、3000ｍ級の山々に囲まれ、質、量ともに水に恵まれた地域。2015年、市は名
水を活かしたブランド推進のため、「世界に誇る『水の山』宣言」を行った。加えて、水
資源の保全活動を積極的に行う企業７社とパートナーシップ協定を締結している。
　2023年には、市内の３つの高校―県立北杜高校、私立帝京第三高校、市立甲陵高校との
連携により、学校の垣根を越えて、「水の山」ユースアイデアプロジェクトを立ち上げ、
生徒たちは１年間、「水」をテーマとして探究活動に取り組んだ。
　パートナー企業によるセミナーや企業視察を経て、グループごとに研究を進め、その締
めくくりである「３校合同発表交流会」に向けて、周到に準備してきた。
　当日は、各校の代表である３グループがアイデアを発表し、他校の生徒や評者、パート
ナー企業と議論を交わした。評者は、環境省の自然保護官や県観光推進機構の事務局長、
山梨県住みます芸人、北杜高校学校長、パートナー企業代表者の５名で、水保全や観光、
教育など各分野の専門家たちである。

◉市立甲陵高校
「北杜市の観光について考える」
［目的］
観光客を増やし、魅力を知ってもらうためにSNS宣伝の有効性を検討する
［方法］
旅行者へのアンケート調査を行い、居住地や年齢、来訪回数、目的等を分析する
［結論］
・南関東圏へのアプローチを増やす
・宣伝はアナログとデジタルの双方の活用が有効
・40代50代のリピーターを増やす
・子育て世代へは北杜市ならではの魅力を伝える
北杜高校；リピーターを増やすというのは、どうやって増やすのかが重要では？
甲陵高校：もう１度来たいと思ってもらえるような魅力を、場所や季節に合わせて発信し
ていく。

◉私立帝京第三高校
「ウォーターレジャーアクティビティ型リゾートの展開」

①業界の需要：増加傾向
②リゾートのコンセプト：自然による癒しと、遊び場による楽しさの提供
③キャンプ場／グランピング施設の特徴：自然環境を楽しむ／気軽に豪華なキャンプを楽
しめる
④リゾートアクティビティ内容：ニジマス釣りや流しそうめんなどの食と、サウナや温泉
、川下り型ウォータースライダーなどのアクティビティ
⑤マーケティング戦略：ターゲット広告やオンライン広告、インフルエンサーの活用
⑥今後の計画：施工計画→経営→ステップアップ
甲陵高校：ターゲットが首都圏の観光客なので、首都圏の居住者の北杜市に対する需要に
ついてデータ分析するとより深まると思う。
評者：施設の建設が前提だが、北杜市の魅力は自然そのもの。地域全体が継続的に盛り上
がっていくには？ という視点がほしい。
◉県立北杜高校
「北杜の水をきれいに保つには？」
［導入］
北杜市の魅力は自然の豊かさであり、特に水のきれいさが最大の魅力。パートナー企業も
名水を保全しつつ活用している。この水の汚染を防ぐために、自分たちにできることは生
活雑排水対策である。
［考案］
地域住民を対象とした料理教室の開催
・メニュー：ベジブロス（野菜の皮や種からとった出汁）を利用したキーマカレー
・フードロスやゴミの捨て方、コンポスト利用、洗剤の使用量など、家庭でできる環境へ
の配慮についても伝える
評者：人間に欠かせない、大事な水を守るために自分にできることがあるのだと大人たち
も気づかせてもらった。ありがとう。
評者：自分たちの実践にとどまらず、周囲の人に水質汚染防止の意識を広げていくことも
考えられている点がとても良い。市内のレストランなどと協働でぜひ実現してほしい。

５名の評者やパートナー企業は、北杜の水を守り、サステナブルなまちづくりを本気で
考えている大人たちである。高校生の考えに対しても、手加減なく本気で向き合ってくれ
た経験は、彼らの中にゆっくりと浸み込み、やがて、北杜市への誇りと、よりよいまちを
つくっていこうという意志として、湧き出ることだろう。

北杜市観光課　
☎ 0551-42-1351

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北杜市観光協会　
☎ 0551- 30- 7866
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